超経済小説 「日本の一分」
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- 02社会・政治 激辛コラム
まずその第一段階としてM&Aで買収したイラク商事に社員の出向を大幅に増やすことにした。イラク商事はイラン物産の隣に本社ビルがあり攻略の橋頭堡である。しかしそれには一つ事前に解決すべき問題があった。亜細亜区極東橋に本社のある(有)北朝鮮商会である。この会社は弱小企業でありながら辣腕の経営者を擁しており、大会社しか保有しないはずの核技術を手にし、それを武器に大会社との業務提携を要求してきているのだ。米商事は国際経団連の決議で(有)北朝鮮商会との商取引を禁止し圧力を加えていた。さらに当の(有)北朝鮮商会と取引のある5社が協議してこの問題に当たっていたのだが会議はほとんどうまく機能していなかった。その中で米商事の子会社日本株式会社の安倍社長は社員が多数拉致されるという被害を出しており、突出して強行路線を主張していた。しかし安倍の実質的上司ブッシュはその頭越しに商取引禁止の一部緩和を密かに検討し始めていたのだ。
事態の進展のないまま年が明け、2007年を迎えた。冬にしては異例に生暖かい1月のある日、米商事のブッシュ社長から安倍社長にホットラインがかかって来た。
「安倍君、今度イラン物産攻略の為にイラク商事への社員出向増派を決めたよ。」
「え? イラン物産は我が日本株式会社にとっては大事な原油取引先なんですが!!」
「そんなことは大事の前の小事だ。今優先すべきは悪のイラン物産を完膚なきまで叩き潰すことだ。」
「そこで後顧の憂いを絶つために(有)北朝鮮商会への取引禁止を緩めることにした。早晩資金援助を要請してくるだろうから君のところで資金援助をしてやってくれ。」
「い、いや、しかし・・ 我が社の社員がまだ多数拉致されている状態でその様なことは・・ 」
「だが向こうはみんな過労死で死んでると言ってるんだろう? 生存の証拠もないのにそれを理由に取引禁止をいつまで言っててもな。もちろん最低限、核は破棄させるからそれでこの問題はすべて決着だ。いいな。」
「はぁ・・ わかりました。」
結局上司ブッシュの飼い犬に過ぎない安倍社長はうなずかざるを得なかった。
「それとうまくイラン物産を叩き潰したら我が社の保安部員をイラク商事から移すことになるので代わりに君の社の保安部員をイラク商事に治安維持のために派遣してくれ。確かつい最近君んとこの防衛課を防衛部に格上げしたばかりだったな。だったら株主総会の議決無しで役員会だけの決議でできるだろう。それに今後君んとこの保安部員をうちが自由に指揮命令できるよう就業規則9条の改正も早く頼むよ。」
日本株式会社の重大な岐路に安倍社長はなにも返事できず震える手で受話器を置いた。気がつくと受話器を握っていた手が異様に汗ばんでいた。それは単に天候の異例な暖かさだけが原因ではなかったのかもしれないと安倍はふと思った。
続く・・・ 続くのか?[E:coldsweats02]
この小説は「華麗なる一族」を超えるのか? 超えねーよ。[E:shock]