晴明! なにやってんの 第二十一夜
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- 15同人誌 晴明! なにやってんの
白狐 異界、人界、紙一重
実在の安倍晴明は系譜上は安倍大膳太夫益材の子で延喜21年(921)に生まれたが実際の出自は謎だらけである。
ただ伝説上は摂津国阿倍野に住む武士、安倍保名(やすな)の子に生まれたとされている。
ある日保名が和泉国信太(信田)の森の明神に詣でたとき、猟師に追われた白狐を助けた。そしてその帰途に葛葉(くずのは)と名乗る美しい娘に出会い、相思相愛となる。そして二人は夫婦の契りを結び、安倍童子という子をもうける。この子が後の天才、大陰陽師安倍晴明である。
三人の親子は幸せな日々を暮らしたが童子が5歳になった時に突然の別れがやってくる。ある日葛葉は庭先に咲いた菊の花の美しさに引き寄せられ陶然となった。すると童子の泣き声がする。我に返った葛葉は自分の姿が白狐に戻っているのに愕然とする。彼女は保名が助けた白狐の化身だったのである。
正体を知られた彼女は「恋しくば尋ねて来てみよ和泉なる信太(信田)の森のうらみ葛の葉」という歌を残して姿を消してしまった。
以上が晴明誕生秘話として知られる「葛葉伝説」である。晴明自身は狐ではないが狐の子とされることで人知を越える異能力を持つ者に何かしらの神秘性を秘めた動物の力を重ね合わせていたのだろう。